先日、住友林業の断熱性ってどうなん?という記事を書いたら少し話題になったようです。
その後、高気密高断熱の重要性に端を発した議論が界隈でヒートアップしており、家系ブロガーの皆さんの渾身の記事が数多く量産されております。
さて、冷たい雨の中を歩いていた夕暮れ時、ふと思い浮かんでこのようなツイートをしてみました。
車の燃費みたいに、可能な限り同一条件で比較したようなデータってないのかなぁ。
— じゃいくん@住友林業のおうち作ってます (@pertamahouse) October 8, 2020
素人にわかりにくい数値の違いを、素人にわかりやすい数字に変換してほしい。
それが室温なのか、電気消費量なのか、何が良いのかはわからんけど。
そんなこと言うと、また無知だ勉強不足だアホボケカスと言われるなw
と、いうことで今回は単純化モデルについて色々と考えたことについて書きます。
尺度がアンフレンドリー
気密や断熱を語る時に、C値、Q値やUA値などの数値が使われます。
が、もしあなたが今日初めて家づくりのことを考えた瞬間にこの数値を目にした場合、意味わかりますか?
その時に、このハウスメーカーはC値が0.1だからすごいぞ、UA値が0.30だから断熱性抜群だ、みたいな理解が出来たらまず間違いなく事前に勉強している方です。
事前知識ゼロで注文住宅に挑み始めた方は、チンプンカンプンでしょう。
かたや自動車の燃費の話。
この軽自動車は燃費が30km/Lです、と言われたらどうでしょう。
30という数字の大小の判断はつかなくても、ガソリン1Lで30kmも走るという理解はできると思います。
30km/Lの算出方法は国が定めた方法ですので、トヨタもホンダも三菱も平等に比較されます。(嘘ついていない限り。)
なので我々はクラウンの燃費とアコードの燃費をA to Aで比べて客観的に優劣を論じることが出来ます。
その背景には、排気量や車両重量、車体形状など他の変数も見える化されているのがあります。
同じようなことが断熱や気密で出来るようになると、気密や断熱の必要性が広く一般的に伝わるようになると思います。
施主が忙しい中断熱やら何やらを勉強することが前提ではなく、もっと取っ付き易く簡単に理解していける方向を向いたら建設的だと思いますよ。
モデルケースでの比較案
突拍子もない、完全に思いつきレベルの話ですが、例えば同一条件下でA社の家とB社の家が夜間12時間に室内温度がどれだけ変化するかを比較できれば、断熱性の違いを論じれますよね。
もっと具体化しましょう。
田園地帯のど真ん中にA社とB社で間取り、開口部、広さなどを同一化した家を、影が被らないよう十分な距離を開けて配置し、夕方から翌朝まで12時間の室内温度変化をモニターした数字があれば如何でしょう。
A社:17度→13度
B社:19度→17度
この場合、B社の方が断熱性が高いと客観的に見えますよね。
更に、この家が室温を20度に保つべく同じメーカーの同じエアコンを室内の同じ部位に配置して自動運転を行った場合の電気消費量を比べると、費用に換算して理解が出来るようになりますよね。
制度化の兆し
と、思っていたら国もようやくこのような表示法を検討しているようです。
今年の12月に光熱費換算値が制定されそうですが、施行は2022年予定です🐧 https://t.co/Ych7GddjOe
— さぬきペンギン@高性能住宅マニア (@NSW23092) October 8, 2020
12月に制定される見込みとのことですが、これは実現するとユーザーフレンドリーになりそうで楽しみですね。
プロ向けのツール
twitterで紹介されたのですが、建もの燃費ナビというまさに燃費表示をするようなツールがあります。
ユーザーフレンドリーな説明に使えるようです。
窓は本当に断熱に悪いのか
このようなモデルケース比較で是非知りたいのが、例えば同じ断熱施工のもとC宅は窓が無い家、D宅は2mX2.2mの掃出し窓を南側に設けた場合に於ける2件の温度変化の違いです。
これにより窓ひとつ付けることによる断熱性・気密性への影響を具体的に理解することができます。
D宅は日差しを浴びて昼間の温度が上がりやすくなりますが、夜間は窓から暖気が逃げやすくなるでしょう。
このような疑問を抱いていたら、また良い事例紹介がありました。
紹介されているサーモの画像だけでも良いので見るべき記事です。
同じ家で開口部を増やして断熱性を若干下げながらも日射を受け入れやすくした結果、逆に暖かくなった事例です。
この事例の素晴らしい所は、断熱性が下がったと言っても超高気密高断熱住宅なので夜間も昼間の熱をキープ出来ている点です。
これが、高気密高断熱住宅の方が言う魔法瓶のような家ですね。
初心者にわかりやすい説明を
調べて行くとこのように非常に有用な情報も多く出してくれているのが高気密高断熱派の方々なのですが、いかんせん素人にはわかりにくいし、情報が多すぎるんですよね。
単純化レベルとしては、住友林業の断熱性ページは分かり易いと思います。
ただ、比較対象が1980年の家では令和時代の性能として松竹梅どのレベルなのか判断するには難しいですね。
この性能比較の背景には、ここ数十年の住友林業施主への配慮があるのかな、と邪推しています。
5年前の弊社の家よりもこれだけ暖かいです、なんて言われたら5年前に建てたばかりの施主さんが怒るでしょうから。
他社との比較も不用意にwebで全体公開はしないでしょうね。
統一された指標が出来て分かり易く比較されるようになれば、表現は変わっていくかもしれません。
ついでに坪単価も分かりにくい
住宅業界には他にも「坪単価」という謎ワードがありますね。
一見分かりやすい数字なのですが、設備も仕様も違えば施工面積の中央値も異なるであろう中で、何から何まで含んで比較する話やら。
本気で坪単価比較しようとしたら、同じ土地で同じ仕様明細で要件定義したうえで見積もりを貰って、初めて比較できるものだと思います。
けど、それって自分専用の比較で、別の人の土地で比較したら全く異なる結果になるかもしれませんよね。
土壌改良の要否判断ひとつでも変わってくるだろうし・・・
突き詰めるとキリがありません。
長くなりましたが、難しい数字をわかりやすくして簡単に比較出来るようになると一般への認知も高くなるだろうけど、その定義が曖昧だとミスリードになっちゃうから気をつけないとね、という一言で締めさせて戴きます。